省エネルギー法で消費電力の基準を設ける「トップランナー基準」が,ルーターやLANスイッチに適用される。急増するネットワーク機器の総消費電力量抑制に向け,今後製品化されるルーターやスイッチは省電力化が進む。2010年度には目標値をクリアした省エネ製品が市場に出回る見通しだ。

 IT機器の省電力化を図る「グリーンIT」の取り組みが進む中,ネットワーク機器の省電力化が加速しそうである。早ければ2008年7月にも省エネルギー法の政省令が改正され,省電力化の目標値を定める「トップランナー基準」の対象に,ルーターとLANスイッチが加えられるからだ。

 トップランナー基準は,電力を多量に消費する機器を「特定機器」に指定し,これに対して削減目標を定めるもの。目標を定める時点で商品化されている製品のうち,最も省エネ性能に優れている機器の消費電力を目標値とする。メーカーはこれから製品化する機器について,決められた時期までに目標値を達成しなければならない。

 経済産業省のIT機器の消費電力の試算によると,2025年のネットワーク機器の消費電力量は2006年の約13倍にも膨れ上がり,IT機器全体の40%強を占める見通し。現在,IT機器としてはサーバーやパソコンがトップランナー基準の対象に指定されているが,消費電力量が爆発的に増えるとの試算を受けて,ルーターやスイッチも対象に加えることにした。

ルーター,スイッチ全般に適用

 今夏の改正で対象に加えられるのは,入出力の実効伝送速度の総和が200Mビット/秒以下でVPN機能を持たない小型ルーターとレイヤー2スイッチである。大型ルーターなどよりも先に適用されるのは,小型機器の方が測定方法などがシンプルなためだという。

 設定される目標値は,小型ルーターでは,LAN/WANインタフェースの種類やVoIP対応の有無,無線インタフェースの有無などにより異なる。LAN側とWAN側の両方がイーサネットの場合は4.0W,WAN側がADSLでLAN側がイーサネットの場合は7.4Wという具合だ。レイヤー2スイッチの場合は,イーサネットの速度やポート数,スループット,PoE(power over Ethernet)の有無,管理機能の有無などの条件に応じて決まる(表1)。


表1●トップランナー基準による小型ルーターとレイヤー2スイッチの目標値の例
省エネルギー法の政省令の改正を経て,早ければ2008年7月にも対象に追加される予定である。
表1●トップランナー基準による小型ルーターとレイヤー2スイッチの目標値の例

 目標達成の期限は小型ルーターが2010年度,レイヤー2スイッチが2011年度。2006年度に比べて小型ルーターの消費電力が16.3%,レイヤー2スイッチが37.7%改善されることになる。

 一方,入出力速度の総和が200Mビット/秒を超える大型ルーターやレイヤー3スイッチも,トップランナー基準を適用される。既に対象範囲や測定方法,目標値の検討が進められており,2009年春にも正式に対象に加えられる見通しだ。